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「彩色」(さいじき)は、某落第忍者漫画の二次創作テキストサイトです。基本的に倉庫。最初に「about」どうぞ。
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知音(双忍)
鉢屋と雷蔵。

ぐわーすごく恥ずかしい。でもコンビなんだ。カプじゃないんだ。でもこれすごく恥ずかしい。
同じだけど、違うから、だから双忍っていうんだよねって話。

雷蔵は、何か、それが、悲しいものであるかのようにいうのだ。

不思議だ。それは悲しくはない。けして悲しいものではないのだ。
と、私はいいたいのだが、いってしまうとますます雷蔵を悲しがらせるだろうので、黙っている。
納得しているふりをしていれば、雷蔵の顔を早く緩ませてやることができるんだろうけど。
でも、私は君に嘘をつきたくないのだ。
私がつく嘘は、みな、しのびとしてのものであって、或いは戯れとしてのそれであって、私はどうしても、君のために偽善の嘘をつきたくないのだ。私は私のためにだけ嘘をつく、それが装いの達人たる私の矜持でエゴなのだ。
君を思うならいくらでも嘘をつけばいいんだろうが。しかし私は君と友人でいたい。
だから、私は。
「悲しくないよ。雷蔵。私は悲しくないんだよ」
飄々とした顔で笑うこともできた。穏やかに言葉を伝えることだってできた。
でもやっぱり、困ったな、ということを表に出して。そういってみた。

雷蔵。君はなんて答えてくれる?どうやって教えてくれる?わからない私に。私には君の感覚はわからないんだよ。君に私の感覚がわからないように。共有できないのは身体の感覚だ。それは絶対だ。嘘をつかないものだ。
私は、君を偽る。私を偽って君を偽る。或いは、私を偽らないために君を偽らない。
君を偽って自分を偽らないというのは、どうやら私にはできないらしい。
逆も然り。自分を偽るということは、君を偽るということのようだ。
私は君の手足のような、君を偽らないものでありたいのだろう。

雷蔵は眉をひそめて、困った顔をして、怒ろうかどうしようか迷った顔で、迷って迷って、最後に決めた。
「三郎。それはね、かなしいと、いうんだよ」
「私を見る君が悲しいんじゃないかい」
「そうだよ」
「君が私の感情を勝手に名付けるのかい」
「…そんなつもりは、ない」
「そうさ。現に君は今名付けた。私のことを、悲しいと名付けた」
「いいわけさせてもらっていいか」
「いいさ」
「かなしいに、別の字を当ててほしい」
「哀れんだのかい?私を?君の云う悲しいを知らない私を?」
「哀れんだよ。見下しているつもりじゃなくて、抱きしめたいほうで」
「…愛おしんだ?」
「そうさ。いと惜しむと書いて、愛おしんだんだ。僕はお前を惜しいと思ってるんだ。そんな悲しみで失くすには惜しいって」
「…感覚の共有なんて瑣末なものに過ぎないってのかい」
手足のようでなくてもいいっていうのかい。そうある必要はないって。
そりゃあないだろうさと雷蔵は頷く。
「そうだ。僕の云う悲しいがお前に理解できなくても、お前の云う悲しくないが僕には悲しいにしか見えなくとも、それでも僕らはそんな違いをひっくるめてやってけるだろうって思ったんだ」
「違うことを認めて?」
「そうさ。違うっていうなら、みんな違う。同じ人間なんて、双子くらいだ」
「私たちは双子のようなのに?」
「ちっとも似ていないよ。三郎だってそう思ってるだろ」
「うん。どんなに似せてもぜんぜん違う。実は私、やろうとすればかなり完璧に雷蔵を模倣できるんだけど」
「うん」
「でも私は、雷蔵じゃない。雷蔵が私と違うものだから、真似できるんだ。雷蔵が最初からいなかったならば、私は雷蔵の真似ができないよ。雷蔵の反応は雷蔵だけのものだから。他の誰も持ってないから。他の誰かも、その誰かだけのものを持ってるから。特有の反応を集めて、私は変装するんだ。特徴のない人間なんていないよ。差異だらけさ」
「僕と君の差異も、そういうこと」
「そうか。雷蔵」
「うん」
「私は悲しくないよ」
「僕はかなしいよ」
「君にわかってもらえないことがちょっと寂しいよ。君のいうことを心からわかれないのが、悲しいよ」
「僕にお前を抱きしめさせてくれるかい」
近くにいっていいかい、と雷蔵は云った。お前の仮面を剥がせるほどに近づいても?
三郎は笑った。
「いいよ。そのかなしさは私が齎したものだね。近くに来ておくれよ。わからなくてもいいとか、わからないからいいとか、そんな問答は不要だ。私は君にいてほしいよ。どんなに違っていても」
違っていていい、といったのは、君だ。
雷蔵は頷いた。
「僕はお前に傍にいてほしいよ。僕がお前を助けて、お前に僕を助けてもらって、そうしていたいよ」
「私は、君の傍にいなくても大丈夫だよ。君がいる、どこかに生きている、楽しく暮らしている、それだけでもいい。君が存在したから私は君を知れた。雷蔵。君が傍にいなくても、私はこうやってちゃんと、君のことを、思いだせるから」
困った顔も、怒ったときの拳骨も、手の熱さも。ごつごつした骨も。こころのやわらかさも硬さも。教えてくれた誠実さも。
何もかもが嬉しかった。君と過ごした時間すべてがまるごと有意義だった。
私の顔は、私にとっての君の存在証明だ。つまり、私にとっての幸福と生の謳歌の象徴だ。たしかにそれが存在したということ。それだけで。
(それだけで、雷蔵。それだけで充分すぎるほど、私は幸福に生きてゆけるのだ)

「三郎。傍にいてくれよ。そうでなければ僕にはわからないことやできないことが多すぎる」
「雷蔵。君が望むなら。私もそう望みたい。君が許してくれるのなら、私は君と共に在りたい」
幸福と生涯手をつないで歩いてゆけるのだとしたら、ああ、なんてことだろう。
どうにかなってしまいそうだ。

「雷蔵、さっきの悲しい、悲しくない、だがな」
「うん」
「それが悲しいものだってことは知ってるぞ」
「それでいいよ。三郎には三郎の目盛りがあるもの」
「ああ。君にも君の目盛りがあるものな」
「そうかな?僕は残念ながら普通だよ。標準値さ」
「標準値なんて、ほんとはないんだぞ。標準や常識なんてみんなのっぺらぼうだ。幻想なんだよ。君は充分個性的で、まっとうに没個性さ」
「褒めてる?それ…」
雷蔵はふと笑った。
「にしても、のっぺらぼうだの、幻想だの、お前にぴったりの言葉の癖に、全然似合わないんだな」
「どういうことだい?」
「お前の個性が素敵だってこと!」
とび抜けてる、でも欠けてる、でもなく。またはあり。とびきり個性的で、有り触れて没個性的で。どちらでもあり、ひっくるめて魅力的だ、と。
笑う雷蔵はとても嬉しそうで楽しそうで、悪戯をしたこどものようで、三郎も嬉しくなる。
「雷蔵。先ほど君を悲しませた私が、今、君を楽しませているな」
「そうさ。お前にはどちらもできるんだ。僕を悲しませることも喜ばせることも、お前だから、できるんだ」
「とても自惚れそうな台詞だ」
「自惚れて結構。お前の自己評価は低すぎる」
「そして、君を悲しがらせることが私にできるのと同じだけの意味で、ハチが君と何かを分かち合ったりできるんだな」
「そうさ。そしてやっぱり僕がお前に喜ばせられるのと同じ重さで、兵助とお前が信頼しあっていたりするんだよ」
「ハチがハチだからで、兵助が兵助だから、か」
「僕が僕で、三郎が三郎なのと同じことだよ」
「みんな違って、みんないい、とかって、どっかの詩があったな」
「安易な結論だね」
顔を寄せ合って笑う。
安易でいいのさ。単純に考えていこう。複雑なものは多いから。あまり難しくするもんじゃない。
簡単なことさ。
君が私を好きで、お前が僕を好きで。
だからかなしくなったりうれしくなったりするんだってことは。




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か ゆ い。
なんというプロポーズ。
ぐわー恥ずかしいこれは恥ずかしい。しかし双忍ってこんなイメージ。
ふたりでいれば最強、が発動してる状態の双忍はすごいと思う。
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